WordPressの代わりにCraft CMSを選ぶ理由
なぜWordPressが選ばれるのか
最近では小中規模の案件にもCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を実装するのが当たり前になってきているように思えます。
情報鮮度の高いコンテンツを提供し、コンテンツボリュームを増やしていくことはSEO的にも重要視されていますが、オープンソースCMSの普及に伴い実装の単価が下がってきているのも理由のひとつかもしれません。というのも、シングルページサイトの一部だけを更新可能にしたり、コンタクトフォームを設置する目的でCMS(多くの場合WordPress)を実装するといった事例も見られるからです。
CMSにはDrupalやConcrete5といったWordPress以外のいくつかの選択肢も存在するにもかかわらず、手軽にインストールでき、改造のしやすいWordPressがデフォルトの選択肢になっている場合が少なくありません。WordPressは、当初ブログ用のプラットフォームとして開発されたツールでしたが、豊富に存在するサードパーティのプラグインやテーマによる拡張によって、企業サイト、キャンペーンサイト、更にはSNSやECサイトの構築にも利用されるようになりました。
2016年11月のAutomattic社のレポートでは、WordPressがインターネット上のWebサイトの27.1%のシェアを獲得したという報告がなされました。
WordPress Passes 27% Market Share, Banks on Customizer for Continued Success
利用事例やユーザーが多いWordPressはホスティングや外部サービス、デベロッパーなどの支持を得やすいので、より選ばれやすい構図になっているようです。
弊社でも多くのサイトをWordPressを使って制作してきました。その殆どがブログ機能を備えたウェブサイトでしたが、いずれもブログがメインのコンテンツというよりは付加的なコンテンツとしての役割でした。そのため固定ページに記事の一覧を表示させて、フロントページ用テンプレートを代わりに作ることでトップページとブログページを分けるといった作業が毎回必要になりました。
このように本来ブログ用途のツールであるWordPressを、カスタマイズ前提で様々な案件に利用するのが常習的にされてきました。
WordPressのメリット・デメリット
WordPressは完全無料で利用でき、オープンソースのCMSとして不動の地位を築いているため、数多くのコミュニティ・開発情報のリソースが存在します。大抵のことはGoogleで検索すればすぐに答えが見つかります。また、豊富にあるテーマやプラグインによって機能の追加やカスタマイズも容易に行なえます。
その反面、オープンソースであるがゆえに脆弱性が発見されやすく、導入実績や利用者の多さからハッカーの標的になりやすいといった特徴があるため、最初にセキュリティ強化のカスタマイズを施し、常にアップデートを行い、本体とプラグインを最新の状態にすることでセキュリティリスクを低くすることが不可欠です。
こういった労力と時間が発生することをクライアントが認識していなければ、毎月の保守・メンテナンス費が割高に感じるかもしれません。結果、クライアント側からするとWordPressを選択することで初期費用を抑えることのメリットは薄くなりかねないのです。
また、高いWordPressの拡張性はそのパワフルな機能であるカスタムフック(アクションフック・フィルターフック)によってデフォルトの機能をハッキングすることで成り立っており、WordPressのコア、プラグイン、テーマそれらにあらかじめフックを付けておくことで、コアのファイル改変なしに、後から機能を追加したり削除できるようにといったカスタマイズ前提のコンセプトがあります。この便利な機能はクライアントの様々な要求への対応を可能にするのですが、やりすぎると本来の用途において必須ではない細かい修正(大抵の場合デザイン上の理由)を当たり前に行うようになるかもしれません。その結果、テンプレートのソースコードを複雑にし、メンテナンス性を大きく低下させる原因に繋がるケースも珍しくありません。
Craft CMSについて
上記の背景があり、最近弊社チームがCMSサイトを構築する上でのメインのツールを再考することになりました。そこで現在有力な候補に上がっているCraft CMSを紹介します。
Craft CMS | Focused content management for web professionals
Craft CMSはまだあまりメジャーではないのですが(特に日本では)、海外サイトのCMS Criticsによる2015年のBest CMS for Developersアワードを受賞し、高い評価で注目されているCMSです。
公式サイトのファーストビューのタグラインによると、
Craft is a content-first CMS that aims to make life enjoyable for developers and content managers alike. ― Craft CMSは、開発と運用の双方を快適に行えることを目指したコンテンツファーストのCMSです。
とあり、あくまでも一例ですが、次の点からそのコンセプトどおりのCMSであると実感できました。
- カスタムフィールド & Matrix
- WordPressプラグインのAdvanced Custom Fieldとその有料アドオンであるFlexible Content Fieldsのような入力欄を拡張する機能が標準搭載されており、機能の追加無しで豊富な種類のフィールドタイプの入力欄、複雑なコンテンツの作成が簡単に行なえます。
- セクションタイプ
- シングル、チャンネル、ストラクチャーという3タイプのセクションタイプによって柔軟なサイトコンテンツの設計と管理しやすいサイト運用を可能にします。WordPressのように手間をかけてカスタム投稿タイプを追加する必要はありません。
- ライブプレビュー
- 画面分割により編集をリアルタイムでプレビューでき、サイトフロントでの見え方を確認しながらコンテンツを編集できます。
- アセット管理
- 使用用途別にアセットを管理できる機能です。例えば共通パーツとブログ記事内の画像を別々で管理することできるので、混在させることによって生じる問題を防ぎ、運用者にとって管理しやすい仕様になっています。またアセットに設定するフィールドも自由に追加・変更ができます。
- ユーザー権限(有償ライセンス)
- ユーザーグループの作成や権限設定によるアクセスレベルのコントロールが可能です。WordPressではUser Role Editorのようなプラグインを使う必要がありましたが、Craft CMSではより詳細な設定が可能です。
- 多言語サポート(有償ライセンス)
- 多言語機能が標準搭載されており、サイトコンテンツの多言語展開が容易に行なえます。
ここでは後述しませんが、その他も多くの優れた特徴があり、機能のカスタマイズなしに様々なタイプのCMSを容易に構築できる仕様となっています。運用が直感的に行えるクリーンでシンプルかつレスポンシブな管理画面も魅力的です。
ただ、WordPressのように完全無料で使えるCMSではありません。ライセンスについては現在3タイプの料金体系になっており、実案件では有償ライセンスのワンタイム購入が必要です。
しかし、上記のメリットを考慮すると決して高い金額ではないでしょう。開発環境ではライセンスを切り替えることで全ての機能が試用できるので、その後導入を考えることもできます。
まとめ
もしこれまでWordPressメインの開発を行っていたなら、Craft CMSを触ってみて、これまでいかにWordPressを酷使しすぎていたかということに気づくはずです。
Craft CMSを使うことでコア機能のハッキングやプラグイン依存を前提とした開発から抜け出し、これまでより楽しく快適にCMS構築が行えるようになるでしょう。